法人破産・会社破産の手続きを自分でやる方法
破産手続きは、必ずしも弁護士に依頼しなければならないわけではありません。ここでは、破産手続きを自分で行う場合の注意点や、準備する書類について解説します。
破産申立てを自分で行う際の注意点
破産申立てには、おおまかに分けて記入書類と収集書類を用意する必要があります。弁護士に依頼する場合は弁護士側で用意する書類もありますが、自分で破産手続きを行う場合はすべて1人で用意しなくてはなりません。
また、弁護士に依頼する場合は基本的に弁護士が書類の矛盾等がないかチェックを行ってくれるため、きっちり準備する必要はありません。しかし、自分1人で行うとなると資料を完璧に作成しなくてはならないため、知識が必要で、手間や時間も多くかかってしまうことに注意しましょう。
また、弁護士に依頼した場合、依頼をした直後に債権者に対して「受任通知」が送付され、以後取り立てや督促の電話は弁護士が対応することとなります。しかし、手続きを自分で行う場合は破産手続きの最中も、債権者からの督促や取り立てが続くことにも注意が必要です。
法人破産申立てに必要な「記入書類」
- 破産手続開始申立書
- 債権者一覧表
- 債務者一覧表
- 資産目録
- 代表者の陳述書(報告書)
「破産手続開始申立書」は基本的に弁護士が作成しますが、自分で行う場合はこちらも自分で用意する必要があります。また、弁護士に依頼する場合は「委任状」や「破産申立についての取締役会議事録又は取締役の同意書」が必要になりますが、自分で手続きを行うのであれば必要ないでしょう。
※参照サイト:裁判所(https://www.courts.go.jp/niigata/saiban/tetuzuki/zikohasan/index.html)
法人破産申立てに必要な「収集書類」
- 法人登記の全部事項証明書(3カ月以内のもの)
- 貸借対照表・損益計算書(直近2期分)
- 税金の申告書控えのコピー(直近2期分)
- 清算貸借対照表(破産申立日現在のもの)
- 不動産登記の全部事項証明書(3カ月以内のもの)
- 賃貸借契約書のコピー
- 預貯金通帳のコピー(過去2年分・通帳の表+2ページ目)
- 車検証または登録事項証明書のコピー
- 有価証券のコピー
- 生命保険証券(生命保険証書)のコピー
- 解約返戻金計算書のコピー
- 自動車価格査定書のコピー(明らかに価値が付かない場合は不要)
- 訴訟関係書類のコピー
- ゴルフ会員権証書のコピー
収集書類については会社の財産状況等によって必要なものがまちまちです。上記のうち、法人登記の「全部事項証明書」、「貸借対照表・損益計算書」、「税金の申告書控えのコピー」はどの会社も必要になります。ただし、どの書類を用意するかは個人の判断では難しいところもあります。弁護士に依頼すればこのような点もあわせてアドバイスを行ってもらえますが、自分で行う場合は1人で用意しなければならない点にも注意が必要です。
※参照サイト:裁判所(https://www.courts.go.jp/niigata/saiban/tetuzuki/zikohasan/index.html)
破産手続きの申立て
必要な書類が準備できたら、裁判所に破産申立てを行います。この申立てを受け、裁判所が破産が必要だと判断した場合、具体的な破産手続きが開始。同時に、以後破産会社の財産の管理を行う破産管財人の選任が、裁判所によって行われます。
破産手続きにかかる期間
書類の準備が順調に進んだ場合、申立てからおよそ2週間で破産手続開始決定が行われます。少額管財であれば、その決定からおよそ3カ月後に債権者集会が開催され、早ければこの第1回債権者集会で破産手続が完了します。
破産会社の財産総額や債権者・従業員の数が多い場合には、破産管財人による財産の換価処分(財産への現金化)や各債権者への弁済・配当に時間がかかり1年くらい要することもあるでしょう。
また、個人で行う場合には破産申立て前の準備に数カ月かかることにも注意が必要です。
破産手続きにかかる費用
破産を決断した企業であれば、すでに資金が底をついている状態も珍しくありません。しかし、破産手続きを行うにも費用がかかります。自分の会社はどのくらいかかるのか?と心配な経営者の方に向けて、破産手続きにかかる費用の目安について解説します。
裁判所に納める費用
自分で破産手続を行う場合、少額管財が利用できません。少額管財とは、個人や零細企業など小規模な法人や会社向けに、費用の少額化や、手続き内容を簡易化したものです。少額管財を利用するには弁護士を代理人に立てることが必須であるため、個人では利用できないのです。
通常の管財事件として扱われる場合、裁判所に納める予納金の額は最低70万円必要です。少額管財であれば最低20万円の費用で手続きを行えるため、50万円程度の差があることになります。
その他、官報公告費用などを裁判所へ収める必要があります。裁判所に収める費用の内訳は以下の通りです。
※参照サイト:裁判所(https://www.courts.go.jp/niigata/saiban/tetuzuki/zikohasan/index.html)
- 予納金:770,000円〜
- 官報公告費用:15,000円程度
- 収入印紙:1,000円〜
- 郵便切手:1,000円〜4,000円
その他実費
予納金以外に、各種書類の取得費や、従業員の源泉徴収票作成を委託するための費用などは実費で支払う必要があります。
経営者の方の自己破産申立費用
会社と同時に経営者も自己破産する場合、裁判所に支払う金額は以下の通りです。
- 官報公告費用:15,000円程度
- 収入印紙:1,500円程度
- 郵便切手:1,000円〜4,000円
申立費用の具体例
会社が都内にあり債権者10社以内、会社だけ破産申立のケース
- 予納金等:220,000円程度
- 実費:5,000円程度
会社が都内にあり債権者数10社以内、経営者も同時に自己破産の申立を行うケース
- 予納金等:240,000円程度
- 実費:10,000円程度
※参照サイト:裁判所(https://www.courts.go.jp/niigata/saiban/tetuzuki/zikohasan/index.html)
まとめ
破産手続きは、弁護士に依頼せず自分で行うこともできますが、実務面においても費用面においてもあまりおすすめはできません。書類の収集一つにしても弁護士側で用意してくれたり、矛盾がないようチェックしてくれたりしますので、正確かつスムーズな手続きが可能となります。費用を心配している場合も、弁護士に依頼すれば少額管財が利用できるため、予納金の差額で弁護士費用をまかなえるでしょう。
また、法律上の良い悪いがわからないがゆえに、知らないうちに違法行為をしてしまう可能性もあり、裁判所や管財人、債権者などから不信感を抱かれたり、厳しい処分を受けたりするリスクも想定されます。かなりの労力を消費したにもかかわらず、個人の免責を受けられなかったのでは本末転倒ですよね。
このように、弁護士費用を節約しようとの考えで、自分で破産手続きを行うのであればメリットはほとんどないと考えて良いでしょう。破産手続きに精通した弁護士であれば、破産費用を工面する方法やアドバイスの知識も持ち合わせています。1人で悩む前に早めに相談に行くことをおすすめします。