法人破産・会社破産しても免責されない場合とは?
法人や会社の破産の場合、個人の場合と違って免責制度はありません。しかし、法人であっても、破産後は基本的にすべての債務の支払義務がなくなります。ここでは、「免責」の意味や、法人にはなぜ免責制度がないのかを解説します。
免責とは
個人の破産の場合、破産後は法律で定められた「免責制度」によって債務を帳消しにすることができますが、法人の場合は、この免責制度が存在しません。とはいえ、法人の場合でも個人と同様に、破産後は基本的にすべての債務を返済しなくて良いことになります。
そもそも免責とは、法的な意味と一般的な意味の2種類があります。どちらも「債務の支払いがなくなる」という意味ですが、法的な意味というのは、破産法によって設定されている免責制度のことです。
法人の場合、この法的な意味での免責制度はありませんが、事実上債務を支払わなくてよくなるため、一般的な意味での免責が適用されると考えて良いでしょう。したがって、「法人破産=免責されない」というのは誤った認識といえます。
法的制度としての免責
破産法には、免責制度というものがあります。免責制度とは、裁判所の免責許可決定によって債務の支払いを免除してもらえる制度です(※1)。
※1「破産手続開始申立てにあたっての注意事項」裁判所より(PDF)https://www.courts.go.jp/tottori/vc-files/tottori/file/140401_chuijikou.pdf
個人の場合はこの制度により、裁判所から公式に免責を受けることができます。このことから、会社や法人が破産しても免責されないと思っている方も多いようですが、法的な免責制度はなくとも、法人や会社も事実上は債務を支払わなくてよくなります。
一般的な意味の免責
法人や会社の破産は、一般的な意味と捉えれば免責されるということになります。免責という言葉は、一般的には「責任を問われるのを免れること」や「債務者が債務を免れること」といった意味があります。
法人や会社の場合は、破産をすると会社自体が消滅してしまいます。そのため、免責制度がなくても、自動的に債務の支払いを免れることになるため、一般的な意味で捉えれば、免責されると考えても間違いではないでしょう。
法人破産にはなぜ免責制度がないのか
個人の場合、破産をしてもその人自体はいなくなりません。そのため、財産や資産を換価処分した後、その人に債務が残らないように免責制度を利用して、債務を免除する必要があります。そうでないと、破産をした意味がないからです。
しかし、法人の場合は、破産と同時に会社自体も消えてなくなります。そのため、わざわざ免責制度を利用して免責許可を与えなくても、債務は自動的に消滅してしまいます。必要がないため、制度もないということです。
法人破産では税金の支払義務もなくなる
同じ理由で、法人の場合は、破産と同時に税金や社会保険料の支払義務もなくなります。会社自体が消えてなくなるということは、債権者側としても請求する場所がなくなるため、事実上債務も消滅してしまうということです。
逆に、個人の破産の場合は、免責制度を利用しても税金や社会保険料からは免れることができません。これらは「非免責債権」として破産法で定められており、支払いが完了するまで請求され続けることになります。
まとめ
個人の破産と法人破産では若干制度が異なるため混同してしまいがちですが、法人破産の場合は、基本的に税金等を含む債務は消滅すると考えて良いでしょう。ただし、一部に例外がみられることもあるため、必ず債務がすべて帳消しになるとは限りません。専門家でないと判断できないこともあるため、少しでも気になることがあれば弁護士事務所に相談してみましょう。
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